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結核菌に感染することで、主に肺に炎症がおこる感染症です。結核は発病してもきちんと毎日薬を飲めば治る病気であり、再発率は2~5%と言われています。
昭和20年代まで、結核は日本人の死亡原因の第1位であり、「不治の病」「亡国の病」などとも呼ばれていました。近年は、医療の発達や生活水準の向上により結核による死亡者や死亡率は激減し、日本の結核患者数及び罹患率(人口あたりの新規結核患者数)も順調に減少しているものの、今でも1年間に1万人以上が発病しています。
結核菌を吸い込み、肺の奥に結核菌が住み着いた状態を「感染」といいます。
結核菌を吸い込んでも、多くの場合は体の抵抗力により追い出され、鼻やのどで菌が消えてしまえば感染しません。
感染しただけでは、体に悪い影響はなく、周りの方への感染性もありません。
結核菌が体の中で活動を始め、菌が増殖して様々な症状が現れることを「発病」といい、症状が出始めると周りの方に感染させることがあります。
実際に発病するのは感染した方の10~20%程度で、感染後6か月から2年後までに発病することが多いとされています。一方で、一生発病しない場合や、感染から数年から数十年後に発病する場合もあり、結核菌が増殖し始め発病する理由は明らかになっていません。免疫力や体力が低下しているときは、結核菌が再び活動を始め、発病しやすい状態と考えられています。
結核菌に感染していて発病していない潜在性結核感染症の方は、薬を飲むことで発病を予防することができます。
感染経路は、空気感染です。
結核を発病している人が、体の外に菌を出すことを「排菌」といいます。排菌している人が咳やくしゃみをすると、結核菌を含んだ飛沫(しぶき)が空気中に飛び散ります。その後、飛沫の水分が乾燥すると、その芯(飛沫核)が空気の流れによって浮遊します。その浮遊する飛沫核を吸い込み、菌が肺の奥まで入り込むことで感染します。
初期症状は、風邪によく似ていますが、咳や痰、微熱などの症状が長引くのが特徴です。また、血痰、食欲低下、体重減少などの症状がみられることもあります。
治療せずに症状がすすむと、肺の中で結核菌の影響が拡大して呼吸困難に陥ることがあります。また、骨や腸管など、肺以外の臓器にも結核菌の影響が出ることがあります。
風邪のような症状が2週間以上続くときは、早めに医療機関を受診しましょう。症状がはっきりと現れにくい高齢者では、食欲低下や体重減少がサインとなる場合もあります。
結核治療の基本は規則正しく薬を飲むことです。きちんと治療をしていれば、周りの方に感染させる心配はありません。
発病している方の場合、組み合わされた3種類から4種類の薬を、6か月から9か月ほど飲み続ける必要があります。薬を飲んだり飲まなかったり、症状が消えたからといって自分の判断で勝手に飲むことをやめてしまうと、体の中の菌が薬の効かない菌(耐性結核菌)になってしまう場合があります。その場合、通常よりも長期間薬を飲み続けなければならず、外科的治療が必要となることもあります。
このことから、決められた期間中、毎日きちんと薬を飲むことが大切です。
なお、症状が重い場合や周りの方に感染させるおそれがある場合には、入院が必要になります。
結核菌に感染しているが、結核の症状はなく、今後発病するおそれがある潜在性結核感染症の方の治療では、発病を抑えるために1種類から2種類の薬を最低3か月から6か月間ほど飲み続けます。薬により発病は70%程度予防でき、その効果は少なくとも10年以上続くと考えられています。
潜在性結核感染症の方は、周りの方への感染性はないため、生活に制限はありません。
結核と診断された方が安心して治療を受けられるように、結核医療費の一部又は全部を公費で負担する制度があり、保健所はその申請窓口となっています。
詳しくは、下記のページをご覧ください。
結核は治療のために薬を飲み続けることが必要な病気です。確実に治療し周囲への感染を広げないためには、完全に薬を飲み続けることが大切です。しかし、長期間、薬を忘れずに飲み続けることは誰にとっても難しいことです。
そのため、保健所では治療が必要な方の服薬を支援する直接服薬確認療法(DOTS)を行っています。
また、再発しやすい治療終了後の2年間は、胸部エックス線検査などの管理検診を実施し、経過を観察しています。
普段から睡眠や食事、運動などに気を配り、健康的な生活を心がけ、免疫力を高めておくことが大切です。
また、症状がなくても、年に1回は職場や市町村等の健康診断(胸部レントゲン検査)を受診しましょう。結核を早く見つけることで重症化を防ぎ、周囲への感染を予防することができます。
なお、65歳以上の方は1年に1回、結核の定期健康診断を受けることが「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」により定められており、水戸市では結核健診・肺がん検診を実施します。
詳しくは、下記のページをご覧ください。
生後1歳までにBCGワクチンを接種することにより、小児の結核の発病を52~74%程度、重篤な髄膜炎や全身性の結核に関しては64~78%程度予防することができると報告されています。
水戸市では、生後3か月以上1歳未満の小児を対象としたBCG予防接種を実施しています。
詳しくは、下記バナーからご確認ください。
結核はインフルエンザのように短期間に次々と感染が広がっていく病気ではありません。
また、手や物についた菌からの接触感染はないため、室内や食器などの消毒は必要ありません。
保健所では、患者の症状や患者との接触状況などを調査し、必要に応じて接触者への健診を行うなど、結核菌に感染している方や発病している方の早期発見、早期治療に力を入れています。接触者健診は、IGRA検査(血液検査)、ツベルクリン反応検査(皮内注射)、胸部エックス線検査などを保健所もしくは医療機関で実施します。
健診が必要な接触者には、最寄りの保健所から連絡がありますので、その指示に従ってください。
結核は潜伏期間が長く、健診は適切な時期に受ける必要があります。ご心配な点がありましたら、保健所へお問い合わせください。
また、施設や企業などの事業所で結核患者が発生したときは、事業所の窓口ご担当者様とやりとりをさせていただく場合があります。その際の流れについては、下記資料をご参照ください。
感染症法では、二類感染症(全数把握対象)に定められており、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出ることになっています。