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茨城県内における劇症型溶血性レンサ球菌感染症の報告数は、2020年以降、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響もあり、報告数が減少していましたが、2023年以降増加傾向となっています。2024年の報告数は、29例と過去の報告数を超えた値となっており、今後の発生動向に注意が必要です。
なお、全国的は、昨年1年間で2023年の2倍となる1888例の報告がありました。
2020年から2024年までの年別発生状況は以下のとおりです。
年 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023(速報値) | 2024(速報値) |
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茨城県報告数(人) | 7 | 9 | 7 | 17 | 29 |
国内報告数(人) | 718 | 622 | 708 | 941 | 1888 |
詳しくは下記リンクをご確認ください。
溶血性レンサ球菌、いわゆる溶連菌には多くの種類がありますが、劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、主にA群溶血性レンサ球菌により引き起こされます。
通常は細菌が存在しない血液や筋肉などの組織にレンサ球菌が侵入することで、急速に症状が進行しショック状態に陥ることもある感染症です。死亡率は約30%とされていますが、重症化するメカニズムはまだ解明されていません。
子どもから大人まで広範囲の年齢層に発症しますが、特に大人に多いのが特徴で、子どもが多く罹患するA群溶血性レンサ球菌咽頭炎 (溶連菌感染症)とは区別されます。
主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です。
また、手足などの傷口から感染することもあります。
初期症状としては、腕や足の痛みや腫れ、発熱や悪寒などの風邪様の症状、血圧の低下、傷口の発赤などがみられます。
発病から病状の進行が非常に急激かつ劇的で、筋肉周辺組織の壊死を起こしたり、呼吸状態の悪化や多臓器不全からショック状態に陥り、場合によっては発病後数十時間で死に至ることも少なくありません。
抗菌薬による治療が行われます。抗菌薬による治療のみでは改善が困難な場合は、集中治療室での全身状態の管理や緊急手術により壊死を起こしている病巣部分の除去を行うこともあります。
重症化のリスクを下げるためには、早期に治療を開始することが重要です。
有効なワクチンはなく、予防には手洗いや咳エチケットといった基本的な感染対策が有効です。
基本的な感染対策については、下記のバナーからご確認ください。
また、手足などの傷口から感染する場合もあるため、傷口を清潔に保つことが大切です。傷口の発赤や腫脹、痛み、発熱など、感染の兆候が見られた場合には、直ちに医療機関を受診して下さい。
感染症法では、五類感染症(全数報告対象)に定められており、診断した医師は7日以内に最寄の保健所に届け出ることになっています。