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麻しんについては、現在、海外における流行が報告されており、特に、ベトナムをはじめとする諸外国を推定感染地域とする輸入事例の報告が増加しています。
日本国内における麻しん患者の報告数は、令和7年4月時点で令和6年の年間報告数を上回っており、茨城県内においても第10週(令和7年3月3日~令和7年3月9日)以降、麻しん患者の発生が報告されています。
今後、輸入事例の更なる増加や、国内における感染事例が増加することが懸念されます。
年次 | 令和元年 | 令和2年 | 令和3年 | 令和4年 | 令和5年 | 令和6年 | 令和7年 |
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全国 | 744 | 10 | 6 | 6 | 28 | 45 | 78(※1) |
茨城県 | 17 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 15(※2) |
(※1)令和7年4月13日までの報告数(速報値)。
(※2)令和7年4月27日現在の報告数。
海外渡航の予定がある方は、下記の注意事項をご確認ください。
麻しんウイルスに感染することで引き起こされる急性の全身感染症で、「はしか」と呼ばれることもあります。感染力が非常に強く、免疫を持っていない人が感染すると、ほぼ100%発症します。麻しんウイルスに一度感染して発症すると一生免疫が持続すると言われています。
世界保健機関(WHO)は、国内に土着しているウイルスによる感染が3年間確認されない状態を「排除状態」としており、日本は2015年3月27日に麻しんの排除状態にあると認定されました。しかし、海外では流行している国が多く、現在の日本国内では海外からの輸入例を発端とする麻しんの発生が報告されています。
主な感染経路は空気感染ですが、飛沫感染や接触感染によりヒトからヒトへ感染が広がることもあります。
典型的な症状は前駆期(カタル期)、発疹期、回復期の3期に分けられ、潜伏期間は通常10日から12日、最大で21日とされています。
38℃前後の発熱が2日から4日間続き、倦怠感や咳、鼻水、のどの痛み、目の充血などの症状が現れ、次第に強くなります。発疹が出る1日から2日前頃に、頬の内側にコプリック斑と言われる赤みを伴った約1mm径の白い小斑点が出現します。
前駆期(カタル期)での発熱が1℃程度下がった後、半日くらいのうちに再び39.5℃以上の高熱が出るとともに、特有の赤い発疹が耳の後ろや首、額に出現します。発疹が全身に広がるまで、39.5℃以上の高熱が3日から4日間続きます。
発疹が出始めて3日から4日経過すると熱は下がり、発疹も治まりますが、発疹の痕がしばらく残ります。
合併症のないかぎり7日から10日後には回復します。
ワクチンを1回だけ接種した方など、麻しんに対する免疫は持っているものの不十分な方が感染した場合、通常の麻しんよりも症状が軽い「修飾麻しん」を発症することがあります。
修飾麻しんの潜伏期間は14日以上になることがあり、典型的な症状が現れないため、診断が難しくなります。感染力は弱いものの、周りの方へ感染させる可能性があるため注意が必要です。
麻しんにかかると免疫力が低下し、細菌による中耳炎や肺炎などの合併症を引き起こしやすく、患者1,000人に1人の割合で脳炎が発症すると言われています。死亡する割合も、先進国であっても1,000人に1人と言われています。
10万人に1人程度とごく稀ではあるものの、麻しんにかかってから7年から10年後に、知能障害や運動障害が進行し、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という重篤な合併症を引き起こすこともあります。
必ず事前に医療機関へ連絡し、麻しんの疑いがあることを伝え、医療機関の指示に従って受診してください。
受診の際は、周りの方へ感染させないよう、マスクを着用し、公共交通機関の利用は避けてください。
特別な治療法はなく、発熱には解熱薬を用いるなど、症状を和らげる対症療法が行われます。細菌による中耳炎や肺炎などの合併症にかかってしまった場合には、抗菌薬を投与する必要があります。
周りの方に感染させる期間は、症状が出現する1日前(発疹出現の3日から5日前)から発疹消失後4日くらいまで(または解熱後3日)とされており、発疹が出現する前の時期は特に感染力が強いと言われています。感染を広げないためにも、麻しんにかかったときは、速やかに学校や職場に連絡し、周りの方に感染させる期間はきちんと休むことが重要です。
麻しんは感染力が強く、空気感染もするので、手洗い、マスクのみでは予防できません。予防する唯一の手段はワクチン接種です。
水戸市では、小児を対象とした麻しん風しん混合予防接種を実施しています。現在の定期接種の対象となる方(1期:1歳以上2歳未満、2期:小学校就学前の1年間)で、まだ接種が済んでいない方は早めに接種しましょう。
詳しくは、下記バナーからご確認ください。
定期接種の対象者だけでなく、医療・教育関係者や海外渡航を計画している方も、麻しんにかかったことがなく、2回の予防接種歴が明らかでない場合は、予防接種を検討してください。
感染症法では、五類感染症(全数把握対象)に定められており、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出ることになっています。
麻しんを疑った場合には、感染症法第12条に基づき、まず臨床診断例として直ちに最寄りの保健所に届出をお願いします。
感染症サーベイランスシステム等で届出た際には、あわせて保健所へ電話連絡をいただきますようお願いします。
診断においては、血清IgM抗体検査等の血清抗体価の測定を実施するとともに、地方衛生研究所等でのウイルス遺伝子検査(※)の実施のため、保健所の求めに応じて検体の提出をお願いします。
(※)血清IgM抗体は、他の疾患でも交差的に陽性となることがあることから、必ずウイルス遺伝子検査を実施する必要があります。また、麻しんの疫学調査において、ウイルスのゲノム配列は極めて重要であることから、保健所は、感染症法15条に基づき、診断医療機関に対して検体の提出をお願いしています。