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「HIV」は、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)の頭文字を取ったもので、ウイルスの名前です。このHIVに感染した状態のことを「HIV感染症」といいます。
HIV感染症を治療せずに放置すると、ウイルスによって免疫力が徐々に低下していき、他の感染症や悪性腫瘍などを発症しやすくなります。このように、HIVの影響により免疫力が低下して、様々な病気にかかりやすくなってしまった状態を、「エイズ(AIDS:Acquired Immunodeficiency Syndrome,後天性免疫不全症候群)」といいます。
「HIV」と「エイズ(AIDS)」は、しばしば混同されますが、正しくは意味が異なります。
以前は死に至る病気とされていましたが、現在は治療薬が開発され、体内のHIVの増殖をおさえ、免疫力を維持することが可能になっています。感染を予防することが最も重要ですが、感染を早期に発見し、発病をおさえる治療を行うことも大切です。
HIVは、感染している人の精液や膣分泌液、血液、母乳に多く含まれており、その主な感染経路は、性行為による感染、血液を介しての感染、母子感染の3つが挙げられます。
HIVの感染力は弱く、性行為以外の日常生活のなかで感染することはまずありません。
日本国内で圧倒的に多いのが、性行為による感染です。精液や膣分泌液に含まれるHIVが、性行為中に性器や肛門、口などの粘膜や傷口を通って感染します。
HIVが含まれる血液の輸血や、覚せい剤などの依存性薬物使用時における注射器具の共用など、感染している人の血液が他の人の血管中に侵入することにより感染します。
日本国内で献血された血液は、安全確保のため厳重な検査が実施されていますが、HIV感染の可能性を完全には排除できません。
過去に問題となった血液凝固因子製剤については、現在は加熱処理が行われているため感染の心配はありません。
母親がHIVに感染している場合、妊娠中や出産時、また授乳時に子どもに感染することがあります。
現在の日本では、母親がHIV感染症の治療薬を服用すること、帝王切開で分娩すること、母乳を与えないことなどで、子どもへの感染を1%以下に抑えることができます。
HIVに感染しても、すぐにエイズになるわけではありません。HIVに感染してからエイズを発症するまで数年から10年程度かかります。
HIV感染後の経過は、症状によって急性期、無症候期、エイズ発症期の3つに分けられます。
感染の機会があったときから数週間以内に、発熱やのどの痛みなど、かぜに似た症状が出ることがあります。
通常は、数日から数週間で症状は自然に治まります。
急性期を過ぎると、自覚症状がない期間が数年から10年程度続きます。治療していない場合、その間に体内ではHIVが増殖し続けており、免疫の仕組みの中心となる白血球の一種であるヘルパーTリンパ球(CD4陽性細胞)が壊され、体を病気から守っている免疫力が徐々に低下していきます。
免疫力が低下し、日和見感染症と呼ばれる健康な人なら感染しないような病気にかかるようになります。
カンジダ症やニューモシスチス肺炎などの日和見感染症に、悪性リンパ腫やカポジ肉腫などを加えた23の疾患が指標として定められており、HIV感染者はこれらの疾患を発症した時点で「エイズ」と診断されます。
大切なのは早期発見、早期治療です。HIVに感染しても、エイズ発症前に治療を始めれば、これまでどおりの生活を送ることができます。少しでも心配がある場合は、検査を受けましょう。
なお、検査で正確な結果を得るためには、感染の可能性があった機会から3か月以上経ってから検査を受ける必要があります。
水戸市や茨城県では、HIV検査を実施するとともに、HIVに関する相談を受け付けています。
詳しくは、下記のページをご覧ください。
また、水戸市や茨城県以外にも検査を実施している機関があります。下記ページなどでお探しください。
抗HIV薬を用いた治療が行われます。現在、HIVを体内から完全に排除できる治療法はありませんが、抗HIV薬によってウイルスの増殖を抑え、エイズの発症を防ぐことで、長期間にわたり健常時と変わらない日常生活を送ることができます。HIV感染が判明したら、できるだけ早い段階で抗HIV薬による治療を開始することが勧められています。
治療を継続し、体内のウイルス量が大きく減少すれば、周りの方への感染リスクをゼロに近いレベルまで下げることができます。ただし、抗HIV薬はきちんと飲み続けなければ、HIVが薬に対する耐性を獲得してしまい、薬が効かなくなってしまいます。一度治療を開始したら、特別な場合を除き、治療を継続する必要があります。
コンドームの正しい使用は、HIV感染を予防する、最も有効な手段です。性的接触の際にはコンドームを正しく使用して、精液や膣分泌液、血液などが粘膜や傷口に直接触れないようにしましょう。また、不特定の人との性交渉は避けましょう。
HIV感染症について正しい知識を身に付けることも、予防行動をとる上では大変重要になります。ページ下部の関連情報からも情報を得ることができます。
感染症法では、五類感染症(全数把握対象)に定められており、診断した医師は7日以内に最寄りの保健所に届け出ることになっています。