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梅毒は、昭和23年から全数報告が開始されて以降、昭和42年の約11,000人を最多とし、その後小流行はあったものの全体として減少傾向でした。しかし、平成22年から増加に転じ、令和5年・令和6年ともに約14,000人に達するなど、注意が必要な状況が続いています。
近年、水戸市内の医療機関からの報告数も大幅に増加しており、令和2年の10人と比較して、令和4年以降はおよそ5倍に増加しています。
令和6年は、男女ともに20代の感染者が最も多くなっています。妊娠している方が梅毒にかかっていると、死産や早産になったり、胎盤を介して胎児にも感染し、先天梅毒により生まれてくる子どもの神経や骨などに異常をきたすことがあります。
梅毒は、早期に発見することで、適切な治療により治癒が可能です。感染の心配がある方は、早めに近くの医療機関や保健所で検査を受けましょう。
水戸市保健所での検査を希望する場合は、下記のページをご覧ください。
※症状がある方は、治療が必要なため医療機関を受診しましょう。
梅毒トレポネーマという病原体に感染することで引き起こされる感染症です。発症後は症状が軽くなったり、無症状になりながら病気が進行する時期があるため、感染に気づきにくく、治療の開始が遅れてしまう危険があります。
梅毒は、一度感染して完治しても再感染を防ぐ免疫は得られない感染症であるため、完治後も感染防止のための対策が必要です。
主な感染経路は、性行為による感染です。粘膜や皮膚が、梅毒による病変部位と直接接触することで感染します。感染するのは性器だけではなく、キスやオーラルセックスではのどや口内に感染し、アナルセックスでは肛門や直腸に感染します。
また、妊娠している方が梅毒に感染していると、胎盤を介して胎児に感染します。
感染した後、時間の経過によってみられる症状や症状が出る部位が変わります。また、妊娠している女性が梅毒にかかっていると、流産や死産、早産などの原因となるほか、生まれてくる子どもに先天梅毒による症状を引き起こすことがあります。
潜伏期間は約3週間です。
主に口の中、肛門、性器などの梅毒トレポネーマが侵入した部位に、しこりや潰瘍(かいよう)ができることがあります。また、股の付け根の部分のリンパ節が腫れることもあります。
これらの症状は痛みを伴わないことが多く、治療をしなくても自然に軽快しますが、体内から病原体がいなくなったわけではありません。
感染から数か月経過すると、梅毒トレポネーマが血液によって全身に運ばれ、小さなバラの花に似ていることから「バラ疹(ばらしん)」と呼ばれる淡い赤い色の発疹が、手のひらや足の裏、体幹部にみられるなど、様々な皮膚のトラブルが出ることがあります。その他にも肝臓や腎臓など全身の臓器に様々な症状を呈することがあります。
発疹などの症状は、数週間以内に自然に軽快しますが、梅毒が治ったわけではなく、一旦消えた症状が再度みられることもあります。
この時期は、その症状からアレルギーや他の感染症などと間違えられることもあり、適切な診断、治療を受ける必要があります。適切な治療を受けられなかった場合、感染後数年から数十年の間に様々な臓器障害につながる可能性があります。
梅毒トレポネーマに感染しているものの、症状が認められない状態のことをいい、主に早期顕症梅毒1期と2期の間と早期顕症梅毒2期の症状消失後にみられます。症状がない状態のまま何年も経過することがありますが、皮膚や内臓で病気が密かに進行しています。
感染から数年程度経過すると、ゴム腫と呼ばれるゴムのような腫瘤が皮膚や筋肉、骨などに出現し、周囲の組織を破壊してしまうことがあります。また、心臓や血管、脳などの複数の臓器に影響が生じ、大動脈瘤や認知機能の低下、歩行障害などがみられることもあります。
現在では、抗菌薬の普及などから、晩期顕性梅毒は稀であるといわれています。
梅毒にかかっている母体から胎盤を介して胎児に梅毒トレポネーマが感染することにより、生まれてくる子どもの神経や骨などに異常をきたすことがあります。出生時は無症状のことが多いものの、生後数か月以内に水疱状発疹や骨軟骨炎などの症状が現れることがあるほか、生後約2年以降に目の炎症や難聴などを発症することもあります。
梅毒は、早期に発見し、適切な治療をすることで治癒が可能です。少しでも心配がある場合は、検査を受けましょう。
梅毒を疑う症状がある場合には、医療機関を受診してください。
水戸市や茨城県では、梅毒などの性感染症の検査を実施するとともに、性感染症に関する相談を受け付けています。詳しくは、下記のページをご覧ください。
一般的にはペニシリン系などの抗菌薬の内服や注射による治療が行われます。場合によっては入院となり、抗菌薬の点滴による治療を行うこともあります。
内服治療の場合、薬を飲む期間は病気の進行具合などを考慮して医師が判断することとなります。症状が改善しても、医師に指示された期間は薬を確実に飲み続けることが大切です。
感染から1年以内は、周りの方に感染させる可能性がある期間とされています。医師が安全と判断するまでは、性行為などの感染拡大につながる行為は控えましょう。
また、パートナーなど、感染の可能性がある周りの方にも検査を受けるように勧めましょう。梅毒は、一度治癒してもパートナーが感染していると再び感染するリスクがあります。必要に応じてパートナーも一緒に治療を受けることが重要です。
コンドームを適切に使用し、粘膜の直接の接触を避けるようにしましょう。オーラルセックスやアナルセックスのときにも使う必要があります。避妊のためにピルを使用していても、コンドームを使いましょう。
また、不特定多数との性行為を避けましょう。
なお、コンドームの使用により感染のリスクを下げることができますが、コンドームが覆わない部分から感染する可能性もあるため、注意が必要です。
感染症法では、五類感染症(全数把握対象)に定められており、診断した医師は7日以内に最寄りの保健所に届け出ることになっています。