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エムポックスウイルスに感染することで引き起こされる感染症です。
2022年までは、主に中央アフリカと西アフリカ地域で流行していましたが、2022年5月以降、欧米を中心に急速に感染エリアを拡大し、世界各地で多数の患者が報告されるようになりました。
国内では、2022年7月に1例目の患者が確認され、2023年1月中旬から患者報告数が増加、2024年以降は、散発的な患者の発生が報告されています。
※2023年5月26日に感染症法上の名称が「サル痘」から「エムポックス」に変更されました。
主な感染経路は、接触感染と飛沫感染です。
ウイルスを保有する動物(リス等のげっ歯類や、サル、ウサギなど)に咬まれることでも感染する場合があります。
発熱や頭痛、リンパ節の腫れ、筋肉痛などが1日から5日続き、その後発疹が出現します。発疹は通常顔面から始まり、体幹部へと広がります。発疹は水ぶくれ(水疱)状になり、最後にはかさぶたになってはがれ落ちます。発疹は皮膚だけではなく、口の中や陰部、目(角膜や結膜)にもできることがあります。
2022年以降の流行では、発疹が性器・肛門周囲や口腔などに集中しており、全身の発疹がみられない場合や、発熱等の症状が無く、急に発疹が出てくる場合もあります。
小児や妊婦、免疫が低下している人などは重症化する場合があります。
潜伏期間は5日から21日(通常6日から13日)とされています。多くの場合は、発症から2週間から4週間で回復します。
エムポックスを疑う症状が見られた場合は、最寄りの医療機関にご相談ください。
医療機関を受診する際は、事前に医療機関に連絡し、マスクの着用や、発疹部位をガーゼなどで覆う等の対策をした上で受診してください。また、比較的空いている時間帯やスペースを選ぶなど、他人との接触を避けるよう行動しましょう。
特別な治療法はなく、症状を和らげる対症治療が行われます。
発疹がかさぶたとなり、全てのかさぶたがはがれ落ちてなくなるまで(概ね21日間程度)は周囲の人や動物に感染させる可能性があります。感染を広げないように以下の点に注意しましょう。
天然痘ワクチンにはエムポックスの予防効果があると考えられています。現時点では、日本でエムポックスの予防を目的とした接種は一般的には行われていませんが、エムポックスに感染している人との接触者を対象とした臨床研究での接種が実施されています。
なお、天然痘ワクチンは、天然痘が撲滅された現在では通常は接種されておらず、日本の1976年生まれよりも若い世代は、天然痘ワクチンの接種歴がありません。
感染症法では、四類感染症(全数把握)に定められており、診断した医師はただちに最寄りの保健所に届け出ることになっています。