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内原郷土史義勇軍資料館 戦後80年企画展
「弓指寛治 不成者 :現代アートが描く義勇軍」
※不成者のよみ:ならずもの
2025年は戦後80年の節目の年です。戦時中、あどけなさが残る少年たちは「五族協和」「王道楽土」の満州建国のスローガンを奉じて満蒙開拓青少年義勇軍となり、旧満州に渡りました。しかし1945年8月のソ連侵攻、そして敗戦によって状況は一変し、渡満した約8万6千人中、約2万4千人が亡くなったとされています。一方、満蒙開拓は現地の人々から収奪した土地を開拓地とした例も多いことから、大陸から帰還した元隊員たちは、「被害者」であると同時に「加害者」であるという十字架を背負いながら、戦後を生きた不条理も横たわっています。
戦争の記憶が加速度的に薄れていく今、忘れてはならない歴史をどう伝えていくか。現在、「次世代の戦争語り部」など、戦後世代が戦争の記憶を語り継ぐ取組が各地で試みられています。
こうした中、義勇軍資料館では「現代アート×義勇軍」という、新たな記憶の継承のあり方にチャレンジします。義勇軍の歴史パネルや遺品が並ぶ展示室に、現代アートがコラボレーションする──この不思議な空間を演出するのは、新進気鋭の現代美術作家・弓指寛治(ゆみさし・かんじ)です。弓指は義勇軍隊員を祖父に持ち、個展「マジック・マンチュリア」など、社会や歴史が生んだ不条理を鋭く問いかける作品を世に送り出してきました。
本展覧会では、弓指の生まれ故郷・三重県から送出された五十鈴(いすず)義勇隊開拓団にスポットを当てた新作約50点が、義勇軍資料館と復元日輪舎の空間を生かしながら展示されます。「鍬の戦士」と呼ばれ、皇国の誇りとされた義勇軍。一方で隊員の生い立ちは様々で、満蒙開拓への向き合い方も一様ではなかったはずです。本展覧会では、とある個性豊かな隊員の実話が、弓指によって生き生きと描き出されます。「不成者(ならずもの)」という不思議なタイトルの答えを、ぜひ探ってみて下さい。
戦後80年の今年、義勇軍資料館は、満蒙開拓青少年義勇軍の抱く不条理、そして戦争と平和の意味について、弓指寛治の世界観をとおして考える機会を提供いたします。そこには歴史を「学ぶ」というより「感じる」場が広がっているはずです。
会期:令和7(2025)年8月1日(金曜日)~10月26日(日曜日)
会場:水戸市内原郷土史義勇軍資料館、復元日輪舎(水戸市内原町1497-16)
開館時間:午前9時~午後4時45分
休館日:月曜(月曜休日の場合は翌日)
主催:水戸市内原郷土史義勇軍資料館
共催:日本農業実践学園<外部リンク>
水戸芸術館館長・近代政治思想史家の片山杜秀氏と現代美術作家の弓指寛治氏が、アートと戦争について語り合います。
※まだ募集前です。募集方法は後日お知らせします。
弓指寛治と一緒にワークショップを楽しみませんか。
※まだ募集前です。募集方法は後日お知らせします。
義勇軍ゆかりの農場でサツマイモの収穫を体験しませんか。
※まだ募集前です。募集方法は後日お知らせします。
内原地区内にある義勇軍関連史跡をめぐります。
展覧会の見どころを、本展企画者3人が交代で解説します。
弓指氏の出展作品のうち、水戸市内で主制作した作品を市ふるさと納税の返礼品とし、作家の創作活動を支援します。資料館と作家が共に文化を発信し、収益につなげていく新たな協働型美術展運営スタイルとして実施します。
※詳細は後日お知らせします
【弓指寛治 ゆみさし・かんじ】
1986年、三重県出身/東京都在住。
「自死」「慰霊」「福祉」をテーマに創作を続ける。名古屋学芸大学大学院修了後、学生時代の友人と名古屋で映像制作会社を起業。代表辞任後上京、ゲンロンカオス*ラウンジ新芸術校の第一期生として学んでいた2015年に、交通事故後で心身のバランスを崩していた母親が自死。出棺前に「金環を持った鳥のモチーフ」が浮かび、以後制作される多くの作品で繰り返し登場する、弓指の表現の核となっている。
2021年より「満洲国」を軸に過去の戦争について考えるためのプロジェクトを開始。
近年の主な展覧会
受賞歴