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【いばらき県央地域連携中枢都市圏連携事業】ドローンを活用した水稲直播実証実験

ページID:0073133 更新日:2025年1月14日更新 印刷ページ表示

​概要

 いばらき県央地域スマート農業推進協議会では,IT等を活用し農業の作業効率の向上を図るスマート農業を推進するため,ドローンを活用した水稲直播実証実験を行います。
 水稲の直播栽培は,移植栽培と比べて,育苗等の労働時間の短縮,苗運びなど重労働の軽減を可能にし,生産性の向上に繋がると期待されています。稲の生育への不安から実施例が少ない現状がありますが,担い手不足など様々な課題を解決するためには,生産性の向上が必要であり,水稲直播の普及は持続可能な農業の実現により近づくと考えられています。
 スマート農業の実現に向け,協議会構成各市町村(笠間市,ひたちなか市,那珂市,小美玉市,茨城町,大洗町,城里町,東海村)や茨城県などの関係機関と連携しながら,当事業を実施します。

実証実験スケジュール​

 ドローンを活用した水稲直播実証実験を,令和6年度は,水戸市・笠間市・茨城町の会場(ほ場)において,以下のとおり実施します。

 ○水稲直播【5月中旬~下旬】

 
日付 会場(ほ場)
5月15日(水曜日)午後 水戸市
5月15日(水曜日)午前 笠間市
5月21日(火曜日)午前 茨城町

 

 ○除草剤散布(1回目)【5月中旬~下旬】

 ○除草剤散布(2回目)【6月】

 ○追肥【8月】

 ○出穂【9月上旬】

 ○収穫【10月中旬~下旬】

太字は,ドローンを活用して実施予定(追肥については,笠間市と茨城町のみドローンを活用して実施)。

実証実験の様子

ドローン直播の様子(動画)

○水戸市 【令和6年5月15日(水曜日)実施​】

 

ドローンに興味のある農業者や,農業関係機関の担当者等,計40名が見学に参加しました。

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直播用に「リゾケア」コーティングの処理をした飼料用米多収量品種「月の光」。「リゾケア」コーティングは,直播栽培でも苗立ちが良いのが特徴です。​

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種子をドローンに入れている様子。 

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今回使用したドローンはDji社の「Agras T10」

約3,400平方メートルのほ場に種子の準備,機材の調整の後,直播を行いました。所要時間は計30分程度でした。

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○笠間市 【令和6年5月15日(水曜日)実施】

 

ドローンに興味のある農業者や,農業関係機関の担当者等,計26名が見学に参加しました。

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今回使用したドローンはDji社の「Agras T25」

約3,300平方メートルのほ場に種子の準備,機材の調整の後,直播を行いました。所要時間は計30分程度でした。

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○茨城町【令和6年5月21日(火曜日)実施】

 

ドローンに興味のある農業者や,農業関係機関の担当者等,計28名が見学に参加しました。​

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今回使用したドローンはDji社の「Agras T10」

約6,400平方メートルのほ場に種子の準備,機材の調整の後,直播を行いました。所要時間は計50分程度でした。

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試験協力先  JA全農いばらき様  ドローンの操縦等

       シンジェンタジャパン株式会社様  種子​への直播用コーティング処理​

生育状況

除草剤散布 1回目

水稲直播を実施した翌日にドローンを使用し,1回目の除草剤散布を行いました。

 ○水戸市 【令和6年5月16日(木曜日)実施​】

   ○笠間市 【令和6年5月16日(木曜日)実施​】

   ○茨城町 【令和6年5月22日(水曜日)実施​】

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     (水戸市での除草剤散布の様子)  

 

 除草剤散布後は田んぼの水の高さを管理し,稲の生育を促しました。

 

生育調査 1回目

   除草剤散布の2~3週間後に各地域で生育調査を実施しました。結果は以下の通りです。

 

 ○水戸市  生育調査【令和6年6月3日(月曜日)実施​】

 ・ほ場の生育状況は概ね順調です。

 ・苗立ち数は,74 本/平方メートルであり,茨城県普通作物栽培基準による湛水直播栽培の目標苗立ち数 70~100 本/平方メートルに適合していました。

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   ○笠間市 生育調査【令和6年5月30日(木曜日)実施​】

 ・ほ場は全体的に見て稲がある箇所とない箇所の差が明らかになっています。

 ・苗立ち数は,28本/平方メートルであり茨城県普通作物栽培基準における湛水直播栽培の目標苗立ち数(70~100本/平方メートル)より少ない状況です。

 ・苗立ち数が少ない理由として,播種後1週間の水を張っている時期に,多くのカモが水田に飛来してきたことによる鳥害と推察されます。出芽した稲は順調に生長している状況です。

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  ○茨城町 生育調査【令和6年6月3日(水曜日)実施​】

 ・ほ場の生育状況は非常に順調です。

 ・苗立ち数は,101 本/平方メートルであり,茨城県普通作物栽培基準による湛水直播栽培の目標苗立ち数 70~100 本/平方メートルに適合していました。 

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除草剤散布 2回目

稲の生育ステージは分げつ期に入り,ドローンを使用し,2回目の除草剤散布を行いました。

 ○水戸市 【令和6年6月6日(木曜日)実施】

   ○笠間市 【令和6年5月31日(金曜日)実施】

   ○茨城町 【令和6年6月6日(木曜日)実施】

 

生育調査 2回目

2回目除草剤散布の2~4週間後に各地域で生育調査を実施しました。結果は以下の通りです。

 

 ○水戸市  生育調査【令和6年6月19日(水曜日)実施】

 ・ほ場全体として,鳥害により出芽していない箇所が数か所確認できる程度であり,良好な生育状況となっています。

 ・藻の発生が見られるものの出芽した稲の生長は順調です。

 ・稲1株当たり3~6本程度に増えています。草丈は約28.4cmでした。

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 ○笠間市  生育調査【令和6年6月25日(火曜日)実施】

 ・ほ場は鳥害により,出芽した箇所と出芽していない箇所がまばらとなっています。なお,出芽した稲の生長は順調です。

 ・稲1株当たり3~6本程度に増えています。草丈は約29.5cmでした。

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   ○茨城町    生育調査【令和6年6月19日(水曜日)実施】

 ・ほ場全体として,鳥害を受けた箇所はほぼ無く,非常に良好な生育状況となっています。

 ・藻の発生が見られるものの出芽した稲の生長は順調です。

 ・稲1株当たり3~6本程度に増えています。草丈は約26.9cmでした。

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追肥

8月上旬に追肥を実施しました。水戸市は流し込みによる追肥,笠間市と茨城町はドローンによる追肥を実施しました。

なお,7月上旬には各ほ場にて中干し,7月下旬には各ほ場に空中散布による害虫防除剤の散布をしております。

 

8月上旬の各ほ場の様子

 ○ 水戸市                 ○笠間市                

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 ○茨城町

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 水戸市…ほ場全体として,鳥害により出芽していない箇所が数か所確認出来ますが,稲の生長は良好です。

 笠間市…鳥害等の影響により,出芽箇所がまばらです。

 茨城町…雑草が数カ所確認出来ますが,鳥害を受けた箇所もなく,稲の生長は良好です。

 

収穫

収穫の適期と判断し,下記の日程で収穫を実施しました。

 ○水戸市 【令和6年10月10日(木曜日)実施】

   ○笠間市 【令和6年10月10日(木曜日)実施】

   ○茨城町 【令和6年10月4日(金曜日)実施】

 

 ○ 水戸市                             

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 ○笠間市  

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  ○茨城町

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直播栽培のほ場はコンバインが入りにくいという声が以前はありましたが,今は機械の性能も上がっているので,問題なく収穫が出来ました。

 

実験結果

実証ほ場 A(水戸市) B(笠間市) C(茨城町)
面積(a) 33.93a 37.41a 64.61a
種子名 月の光 月の光 月の光
耕耘時期 4月下旬 4月下旬 4月下旬
播種日 5月15日 5月15日 5月21日
播種量(kg/10a) 3.2kg/10a 3.2kg/10a 3.4kg/10a
1回目除草剤実施日 5月16日 5月16日 5月22日
2回目除草剤実施日 6月6日 5月31日 6月6日
追肥実施日 8月1日 8月9日 8月9日
収穫 実施日 10月10日 10月10日 10月4日
単収(kg/10a) 290.3kg/10a 231kg/10a 351.7kg/10a

 

 結果は,どのほ場も収量が基準値に達しませんでした。

 播種日から出穂期( 5~ 7 月)までの気象は,平年と比べ平均気温は 1.4℃ 高く,日照時間は 114 %と多かったです。登熟期間( 8~9 月)の気象は,平年と比べ平均気温は 1.3℃ 高く,日照時間は平年比 100 %と平年並でした。

 生育経過は,水戸市と茨城町では平方メートル当たりの茎数は十分確保できており順調でしたが,笠間市では出芽後に鳥害を受け,苗立ち数は一般的な目標数値のの70~100 本/平方メートルより少なく,茎数も少なく推移しました。また水戸市では令和6年7月18日調査時点で葉色が淡かったです。

 除草剤は初期剤(播種翌日)と初中期一発剤( 5 月下旬)の2回の散布で雑草の発生を抑えられていました。どのほ場も出穂期は令和6年8月18日頃でした。

 生育は,水戸市では,イネカメムシの被害により不稔籾(籾の内部に玄米がない籾)が発生し,成熟した籾の割合が低くなりました。笠間市では,十分な茎数を確保できなかったため、穂数が少なくなりました。

 収量は,水戸市 290.3kg/10a,茨城町 351.7kg/10a,笠間市231kg/10aとなり,飼料用米の基準収量 水戸市 540kg/10a,茨城町 546kg/10a,笠間市 512 kg/10a に比べて大幅に低くなりました。

 減収の主な原因として、本年度発生が多かったカメムシによる被害が考えられ、供試品種の「月の光」は地域の主力品種「コシヒカリ」よりも出穂が遅いため、カメムシが集中してしまい被害を更に助長させたものと考えられます。

 労働時間は,ドローン直播の導入により育苗管理と田植えの時間が大きく削減されたので、移植栽培の 46 %と半分以下となりました。(詳細は下表の通り)

  当実験の直播ほ場
(時間/10a)
一般的な移植ほ場
(時間/10a)
耕起(2回) 0.68 0.68
代かき 0.64 0.64
肥料散布 0.18 0.18
育苗管理 0.00 3.13
播種,田植え 0.02 0.64
除草剤散布 0.05 0.10
追肥 0.04 0.50
その他 ※ 2.1 2.1
労働時間 合計 3.71 7.97

※その他は収穫、脱穀、乾燥、調製、出荷にかかる労働時間


 今回のドローン直播による実証実験では、水戸市や茨城町では,苗立ちが目標数値程度まで到達しましたが,その後の成熟した籾の割合が低くなっているため,苗が立った後の生育環境に問題が生じたと想定されます。主にカメムシの被害により収量が低くなりました。一方で笠間市は鳥害による被害でそもそも苗が立たなかったので,収量が増加しませんでした。

 収量を増加させていくためには,カメムシ防除を適期に実施することや回数を増やすことのほか,高温耐性があり,出穂期が「コシヒカリ」と同等で耐倒伏性が強い多収の品種を用いるとともに、鳥害対策として水管理に注意することなどの対応が必要と考えられます。今回の実証実験の結果を踏まえた改善を行い,収量の向上や労働力の軽減を目指していきます。