
ベリーダンサー 大江ジャスミンゆかさん
世界最古の踊りの一つであるベリーダンス。古代から豊穣や子孫繁栄を祈るために踊られてきた、伝統的な民族舞踊です。そのきらびやかな衣装や、しなやかで力強い表現は、観る人を魅了し、今や世界中で親しまれています。今回は、ベリーダンスを愛し、独自の研究により世界に類を見ないスタイルを創り上げたダンサーのお話。
止まらない探求心
小さい頃から踊ることが大好きでした。クラシックバレエを5歳から習い始め、教本を買って自分で技を研究したり、お姉さんたちが踊っているのを見て振り付けを覚えたりなど、今思えば分析好きの性格も、その頃から変わらないですね。
水戸市南町でジャスミン・ベリーダンス・スタジオ<外部リンク>を営む大江ジャスミンゆかさんは、自身のルーツをそう語ります。

一度バレエから離れたのですが、東京の専門学校時代に、またバレエを始めてみようかなと思ったんです。ただ、体への負担もあったので、バレエではなく、他のジャンルのダンスに目を向けてみようかなと。ある時、インターネットで「裸足で踊れるダンス」と検索して偶然ヒットしたのが、ベリーダンスでした。
早速ベリーダンス教室の体験レッスンに参加すると、バレエとは異なる動きに魅了され、その日のうちに入会を決意。ベリーダンスの世界にのめり込んでいくこととなります。
日常のすべてが稽古
ジャスミンさんは当初、体は柔らかいのに動きが硬く、いつも体を痛めていたそうです。そんなとき、その後のベリーダンスへの向き合い方を大きく変える考えに出会います。
東洋的な身体操作の考え方なのですが、「今の体をどのようにして使うか」にフォーカスしています。何より特徴的なのは、「日常のすべてが稽古」という発想に基づいているので、きつい筋トレや柔軟体操を一切行わない。立つ、座る、食べる、呼吸する…自然な動きの中に、踊りにつながるヒントが詰まっているんですよ。
その考え方の通りに、自分の体を観察し続けた結果、反り腰や関節のズレなどのトラブルが、いつの間にかすべて解消したといいます。

レッスンでも自身が学んだ体の使い方を指導
特別な能力や過酷なトレーニングは必要ありません。工夫すれば、誰でも体に優しく心も気持ちの良い踊りができます。そして、自然な動きを大切にしながら、能楽や歌舞伎にも通じる日本特有の“間”や“止まる美”などの日本的な表現を取り入れたスタイルを、私は「ニッポニズム・ベリーダンス」と名付けました。
芸術の中心地は東京というイメージがあるかもしれませんが、世界中で私しか追求していない「ニッポニズム・ベリーダンス」だからこそ、今では県外から習いに来てくださる方がいます。2024年に私のソロ公演を水戸で開催したときも、全国各地から足を運んでいただきました。独自性を打ち出していけば、水戸はもっと人を惹きつけられる場所になると思います。
世界最古の踊りを、唯一無二の新しい形へと昇華させたジャスミンさんだからこそ、その言葉への重みが増します。

あらゆるものが可能性
イベント出演時、必ずマイクパフォーマンスを行うというジャスミンさんは、オリジナリティあふれる演出を心がけています。
水戸黄門まつりでは、南町1丁目ステージに出演させていただいています。その時に、南町1丁目の方々のお店を紹介させていただくんです。皆さん本当に素敵なお仕事をされているので、少しでも知っていただけたらなと思って。あと、私は水戸ホーリーホックのサポーターなのですが、サポーター仲間も見に来てくださるので「この前の試合勝ったぞ!」と盛り上げたり、選手のチャントの曲を使い、会場一体となって踊ったり。

ジャスミンさんが創るステージや独自の世界観は、何か特別な体験からインスピレーションを得ているわけではありません。
身近な生活から、色んなものを感じてみようとすることが大切だと思っています。自分が見て感じて体験したものを、ありのままに。そうするともう、あらゆるものが踊りの表現へとつながっていく。可能性は無限大ですよ。

福を結ぶ
ベリーダンスのプロとして活躍するジャスミンさんは、また別の顔を持ちます。
日本三名園の一つ、偕楽園で開催される水戸の梅まつり<外部リンク>。咲き誇る梅を観に、多くの観光客が訪れます。近年では、味覚で味わう梅も楽しんでもらおうと、オリジナルブランド「水戸乃梅 ふくゆい」を使ったお菓子を販売しています。
ジャスミンさんは、水戸の街をさらに盛り上げるべく、偕楽園でその販売を担う存在として活躍しているのです。
私、もともとはホテルで働くのが夢だったんです。専門学校で国際ホテル科を専攻し、英語とおもてなしを学びました。マレーシアの5つ星ホテルで研修させていただいたこともあります。ベリーダンスの道を追求すると決めてからは、身体操作について研究していたのですが、ある時「あなたの語学スキルとホスピタリティを活かして、水戸の観光の力になってほしい」とお声がけをいただいたんです。プロとしてベリーダンス一筋で生きていくと思っていたので、そのお声がけにはとても驚いたのですが、過去の学びや今の研究がすべて一つにつながったような感覚を覚えました。
「ふくゆい」には「水戸市で生産された梅を通して、人々へ福を結びつけたい」という願いが込められています。「ふくゆい」によって得た経験はその言葉通り、ジャスミンさんの人生に福を結びつけてくれたことでしょう。
梅まつりに関わる人々が一丸となって、期間中30万人以上のお客様を迎える光景を目にするたび、何とも言えない誇らしさを感じます。ご来場された方々に「水戸って素敵なところだね。また水戸に来たい」と思ってもらえたら嬉しいです。

水戸から世界へ-ジャスミン茶の本
日々新たなことに目を向けているジャスミンさんには、密かに抱く夢があります。
茨城ゆかりの画家・岡倉天心は、茶道を通して日本の文化や美を伝える『茶の本』をまとめました。私は、ニッポ二ズム・ベリーダンスをはじめ、これまで追求してきた美を『ジャスミン茶の本』としてまとめたいんです。そのために今は、身体操作の研究はもちろん、SNSを通じて文章力を磨くことにも励んでいます。
自身の経験が面白いようにすべてつながり、ますます進化を続けるジャスミンさん。
彩り多き人生が織りなす魅力に、これからも目が離せません。
『ジャスミン茶の本』が発刊されるその日へと期待を寄せて-。

打掛を切ってアレンジするなど、衣装はすべて自作とのこと