
MOOD COFFEE&ESPRESSO 大貫 健晴さん
水戸市南町のスクランブル交差点から南側に向かって、くろばね通りに足を踏み入れると、何とも香ばしいコーヒーの香りに誘われます。
2021年にこの地で「MOOD COFFEE&ESPRESSO」をオープンした大貫健晴さんは、実はものすごい人物。2024年11月に奈良県で開催された「ジャパンコーヒーロースティングチャンピオンシップ(JCRC)2024」で優勝し、日本代表として世界を舞台に戦ったのだとか。
今回は、そんな大貫さんのルーツや、世界大会挑戦への道のりに迫ります。

奥深さを追求して
大学まではサッカー漬けの毎日で、コーヒーとは無縁だったんです。
そう話す大貫さんは、大手コーヒーチェーン店でアルバイトを始めたことをきっかけに、 コーヒーの魅力に惹かれていったそう。
上京してバリスタとして働く中で、後に夫婦となる妃呂巳さんと出会います。
東京では二人でたくさんのお店を巡り、一杯のコーヒーに詰まった技術を肌で感じて、刺激を受けました。次第に、自分たちの店を持ちたいという気持ちが強くなっていきました。

様々なスタイルのコーヒー店がひしめく東京で、二人は別々の店舗で修行をすることになります。
一般的に、質の高いコーヒーを淹れるには、抽出の過程が大切だと思われる方が多いと思いますが、実はコーヒーの品質を左右するのは、豆の生産地や生育環境の違いによるところが大きいんです。次に、豆が持つポテンシャルを焙煎によって引き出すことで、おおよその風味が決まります。初めは抽出技術を主に学んでいたのですが、もう一歩踏み込んで、バリスタとしての表現の幅を広げたかったので、焙煎に力を入れている店で修行することにしました。

自然体でいられる場所
焙煎技術に磨きをかけ、大貫さんの次のステージは地元・茨城へと移ります。
出身はひたちなか市なのですが、水戸市内の高校に通っていたので、この南町周辺には元々親しみがありました。僕も妻も、東京のような人が多い環境ではなく、地域に溶け込みながらファンを増やしていきたかったので、良い場所に店を構えることができてよかったです。あと、僕はランニングが趣味なのですが、陸橋から見える千波湖の景色は最高ですね。

2021年の創業以来、水戸を拠点にして良かったと感じる機会が多くなったそう。
水戸はいい意味で、人と時間の流れがゆったりとしていますね。都内だと、時間に追われていて、それほど深くお客様と交流することができなかったのですが、今では常連さんも増え、僕たちのコーヒーとこの空間を楽しんでもらえていると思います。長崎出身の妻も、水戸が気に入ったみたいです。

コーヒーを飲む文化が浸透し、水戸のまちなかにもコーヒー店が増えてきています。大貫さんは、そのような状況をどう感じているのでしょうか。
他のお店を競合店として意識することはないですね。むしろ、この近辺に良いお店が増えた方が、カフェ巡りをしてまちなかを歩いてもらえることにつながるし、その中でうちの店の魅力を多くの方に伝えていければと思っています。
日本一から世界一へ
これまで培ってきた焙煎技術が評価され、日本一の称号を勝ち取った大貫さん。
次の舞台は「World Coffee Roasting Championship 2025 in Houston」。
2025年4月、アメリカ・ヒューストンで開催された世界大会で、日本代表として、23か国の焙煎士(ロースター)たちとしのぎを削りました。

本番では、出場者全員が同じ焙煎機、豆を使って焙煎します。本番で使用する焙煎機が奈良にしかないので、練習のために毎月通いました。あと、当日になってみないと、どんな豆を使うのかわからないんです。そういった意味では、他の出場者との勝負というより、自分自身との戦いですね。世界大会に向けて、準備期間が短く、個人店からの出場ということもあり、環境面や資金面でかなりハードな挑戦となりました。
世界で戦う厳しさを語る大貫さんですが、各国の有名なロースターが集う中、なんと初出場で第10位というすばらしい成績を収めました。

ロースターとしての自分の現在地を知りたくて大会に参加したのですが、こうして日本代表として挑戦することができて、すごく良い経験をさせていただきました。これからも世界を見据えながら、水戸からコーヒーの魅力を発信していきたいです。

地に足をつけながら
おかげさまで、国内で優勝してから、コーヒーファンの方を中心に注目していただくようになりました。今後は、扱う豆のラインナップを増やし、焙煎環境も改善しながら、色々な焙煎を試し、ステップアップしていきたいです。

水戸の中心市街地に、僕たちのように個人で出店する若い方々が増えてきています。特に平日は、多様な世代のお客様の来店が期待できるので、飲食店以外にも創業しやすい環境が整っているんじゃないでしょうか。これからの方にはぜひチャレンジしてほしいですし、まちなかで共に頑張る仲間が増えたら嬉しいですね。
偉業を達成しながらも、大貫さんからそれを押しつける雰囲気を感じさせないのは、地元に も目を向けながらファンを獲得し続けている 由縁かもしれません。 日本一のロースターがさらなる脚光を浴びる未来は、そう遠くないでしょう。
