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全国的な梅毒患者の報告数は、1948年以降、小流行を認めながら全体として減少傾向でしたが、2010年以降増加に転じ2018年には7,000例近くの症例が報告されました。その後いったん減少となりましたが、近年また増加傾向となっています。
水戸市内では、令和4年は50件の発生届がありました。年代別にみると、40代が最も多い30%となっています。また、20代から30代の若年層が、感染者の半数を占めています。
梅毒トレポネーマという病原体により引き起こされる感染症で、主にセックスなどの性的接触により、口や性器などの粘膜や皮膚から感染します。オーラルセックス(口腔性交)やアナルセックス(肛門性交)などでも感染します。また、一度治っても再び感染することがあります。
感染すると2〜3週間後から性器や肛門、口などにしこりができたり、全身に発疹ができたりしますが、一旦、症状が消えるため、治ったと間違え、発見が遅れる危険があります。
ペニシリンなどの抗生物質が有効ですが、治療しないと症状は段階的に進行して、最終的には中枢神経まで侵されます。しかし、症状が出ない「無症候性梅毒」の状態で、永年にわたり気がつかないまま過ごすケースもあります。
梅毒トレポネーマという細菌が粘膜や皮膚から感染することでおきます。
感染経路としては、性交渉時の接触感染が主流です。梅毒が感染するのは性器だけではなく、キスやオーラルセックスでは、のど、口内に感染し、アナルセックスでは、肛門や直腸に感染します。また、一度治っても再び感染することがあります。
潜伏期間は約3週間です。感染から1年以内(第1期、第2期)は性交渉などの接触による感染力のある時期とみなされています。
妊娠中に感染をしていると、胎盤を通じて赤ちゃんに感染させる可能性もあります(母子感染)。
梅毒トレポネーマが侵入した部位(主に口の中、肛門、性器等)にしこりや潰瘍(かいよう)ができることがあります。また、股の付け根の部分(鼠径部)のリンパ節が腫れることもあります。これらの症状は痛みを伴わないことが多いです。治療をしなくても症状は自然に軽快しますが、ひそかに病気が進行する場合があります。
感染から3ヶ月程度経過すると、梅毒トレポネーマが血液によって全身に運ばれます。この時期に、小さなバラの花に似ていることから「バラ疹(ばらしん)」とよばれる淡い赤い色の発疹が、手のひら、足の裏、体幹部などに出ることがあります。その他にも肝臓、腎臓など全身の臓器に様々な症状を呈することがあります。
発疹などの症状は、数週間以内に自然に軽快しますが、梅毒が治ったわけではありません。また、一旦消えた症状が再度みられることもあります。アレルギーや他の感染症などとの鑑別が重要であり、適切な診断、治療を受ける必要があります。
症状がないまま何年も経過することがありますが、皮膚や内臓で病気は静かに進んでいます。
感染後数年程度経過すると、ゴム腫と呼ばれるゴムのような腫瘤が皮膚や筋肉、骨などに出現し、周囲の組織を破壊してしまうことがあります。また大動脈瘤などが生じる心血管梅毒や、精神症状や認知機能の低下などを伴う進行麻痺、歩行障害などを伴う脊髄癆(せきずいろう)がみられることもあります。
現在では、抗菌薬の普及などから、晩期顕性梅毒は稀であるといわれています。
妊娠している人が梅毒にかかると、胎盤をとおして胎児に感染します。生後数年以内の乳幼児期に症状が現れる早期先天梅毒では、梅毒しん、骨軟骨炎などがみられ、学童期以降に症状を呈してくる晩期先天梅毒ではハッチンソン3徴候(実質性角膜炎、内耳性難聴、ハッチンソン歯)やゴム腫などがみられます。先天梅毒の報告は現在ではまれです。
梅毒にはペニシリン系などの抗菌薬が有効です。抗菌薬の内服治療が一般的に行われています。
内服治療の場合、内服期間は病期などを考慮して医師が判断します。医師の許可を得るまでは、症状が良くなっても、自己判断で内服を中断しないようにしましょう。また、医師が安全と判断するまでは、性交渉等の感染拡大につながる行為は控えましょう。
また、感染の可能性がある周囲の方(パートナー等)も検査を受け、必要に応じて治療を受けることが重要です。
医師による診察と血液検査(抗体検査)で診断します。第1期の最初の数週間は抗体検査をしても陽性反応が出ないことがあるため、感染してから十分な期間(約3週間)をおいて、検査をする必要があります。
また、梅毒は第5類感染症(全数把握疾患)に定められており、診断した医師は7日以内に最寄りの保健所に届け出ることになっています。