水戸のお宝再発見(10)弘道館・偕楽園
世界遺産登録を目指して
弘道館と偕楽園は、水戸市のみならず、我が国が誇るお宝といえます。弘道館は天保12(1841年)年に日本最大の総合大学として、偕楽園は天保13(1842年)年に、教育の休息の場として、9代藩主徳川斉昭により創設されました。斉昭は、幕末の国難に直面し、教育立国による人材育成が急務と考え、水戸の地に一大教育施設をつくったのです。国家の将来を見据えての建学は、「天下の副将軍」ともいわれている水戸藩ならではの特色といえます。
また、弘道館・偕楽園は、世界史上に例のない、江戸時代の「学びの文化」を象徴する教育資産でもあります。江戸時代の人々は、身分や地域を越えて、藩校・郷校・私塾・寺子屋など様々な学校に通い、自由な教育を受け、高い識字率を誇っていました。たとえば、私たちにとってなじみのある、時代劇でかわら版を庶民に配っているシーン。実は日本以外では考えられない光景なのです。
これは、ヨーロッパや東アジア地域には見られない、日本独自の特徴でした。幕末維新期に来日した多くの外国人も、当時の日本人の教育水準の高さを賞賛しています。開国後、日本が非西欧社会でいち早く近代化に成功した背景にも、江戸時代の「学びの文化」の普及が基盤にあったのです。
水戸市では、こうした世界に誇る江戸時代の「学びの文化」の舞台となった教育遺産のうち、それを象徴する4地域の遺産をまとめて登録しようとする取組を進めています。弘道館と偕楽園のほか、現存最古の学校・足利学校(栃木県足利市)、我が国最古の郷校・閑しずたに谷学校(岡山県備前市)、我が国最大の私塾・咸かんぎえん宜園(大分県日田市)がそれです。
世界遺産といえば巨大な遺跡や豪華な建造物など、珠玉の遺産を思い浮かべるかと思います。しかし、最近の世界遺産では、複数の遺産で広い地域にまたがり、なおかつ、新しいテーマの遺産が歓迎されている傾向にあります。このようなことから、世界に例のない「学びの文化」を世界遺産にしようという取組は、世界遺産の専門家からも高く評価されております。本年、世界遺産条約制定40周年という節目の年を迎えるなかで、教育の大切さを「学問の府・水戸」から発信することは、有意義な取組と考えています。
まもなく弘道館・偕楽園は、私たちが愛する梅の季節を迎えます。世界に誇る学問・教育の息吹を、ぜひ味わってみてはいかがでしょうか。
文化課 鬼沢隆文
(「広報みと」平成24年2月1日号に掲載)
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